あの日 #25
父「え・・・?
そんなはずはない」
「私は"陸"を有してから、ずっとこの数字が"変わる"ことはなかった。」
「それにこの間は、いつもより波動が扱いづらくて、
体調が優れないから護符を使った。
気力が奪われすぎたくらいなんだ。」
"弐"の爺「その反応が、数字が変化した証拠だよ。
これまでよりも自分の波動を、気力を、より封じに持っていかれる。
鍛錬の求められる基準が上がってるんだ。」
"壱"の女「封じの結界を作りだす者として、
あんたに求められる基準が変わったんだ。
その力を有しているから。
あんたには可能であると、お上が認めたからだよ。」
呆れたような、悲しげでもあるような表情を浮かべながら
「何故この兆候に気づけない・・・」
「いや知らなんだのか・・・」
「哀れよのう・・・」
と各々が口にした。
父「そんな・・・」
彼らに伝えられた事実に、だんだんと青ざめていく父の顔に、
とても悲しく、やるせない気持ちが溢れてくる。
僕の友を、
そして友の両親である、里を護ってくれていた方々を・・・。
犠牲に・・・
危機に・・・
さらしてしまったのが・・・
僕の父だったなんて・・・。
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あの日 #24
僕にとってもよくわからない展開に、
ただ戸惑っていた中、父は僕よりもさらに動揺していた。
父「よくわからん言いがかりだ。
ここへ残れと・・・?息子が何か事を大きくしたのなら、
申し訳なく思うが・・・見たらわかるだろう?
首元の数字も、なにより息子はこんな傷を、負っているんだ。」
参の男「何言ってるんだ・・・?あんた」
弐の爺「じゃあ何故に、ここへ連れてこられたと思っているんだい?」
父「帰りが遅い息子を連れ帰りに来ただけだ。」
参の男「はぁ?!」
僕「父さん・・・まさ」
参の男「まさか・・・見えていないのか?」
父「さっきから何なんだいったい?
封じの儀で我々は、日頃ギリギリの状態になるまで
気力を奪われることに協力している。それで十分だろう。
結界の綻びがどうの・・・"陸"である私たちには関係がないだろう!!」
壱の女「やっぱり・・・。」
僕「父さん・・!!」
壱の女「おっさん。見えなくなってるね。
あんたの有している数字(力)も、
息子の数字(力)も。」
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あの日 #22
辺りをきょろきょろと見まわし、立ち上がろうとした時
男 「おい。」
「聞いているのか?」
「この状況は何だと聞いている!!」
僕は、投げかけられる問いに答えている場合ではない。
僕「僕の・・・友が・・・
闘っていたんです!
彼はどこに・・・?」
男「まずはこちらの問いに答えないか!
なぜこのような状況に?
どうして君があんな無茶を?」
僕「僕の友は?ここで闘っていたんです!」
「まさにこの場所で・・・
いったいどこへ・・・」
見知らぬ大人達の問いに答える余裕などなく
しっかりと目を凝らして、辺りを見回す。
爺「話にならん・・・」
女「もう一人のガキんちょならこっちだよ。
落ち着きな。」
「だいぶ瘴気に当てられてる。
こんな状態で・・・よく立って居られてもんだよ」
「"壱"の血族とはいえ、本人は未だ"弐"にすら成りかけの状態なのに」
男「それで?この状況は!」
女「大体理解できたよ、あんたも落ち着きなって。」
爺「どうゆうことだ?」
女「この辺りが担っている結界の範囲に入った時、
何か違和感を感じなかったかい?」
男「違和感?それは魔の物の瘴気ではないのか?」
女「違う。結界の〝綻び″だよ。」
女「自分達自身の波動で作り出している結界特有の、
あたしたちには軽く感じるはずの空気が、少し重く感じたんだ。
ここは鈍ってるってね。」
爺「なるほど・・・」
女「この里の〝壱″の家と、近くの里も見に行こう。
原因はそこらだね」
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